母性の紹介:2022年日本映画。湊かなえの同名小説を実写化したのが本作です。母と娘における恐ろしいまでの関係性を、戸田恵梨香と永野芽郁の主演で浮き彫りにしていきます。母性を持てず娘を愛せない母と、母を愛したい娘が衝撃的な結末に行き着きます。

監督:廣木隆一 原作:湊かなえ 出演:戸田恵梨香(田所ルミ子)、永野芽郁(清佳)、三浦誠己(ルミ子の夫・田所哲史)、中村ゆり(ルミ子の親友)、山下リオ(ルミ子の義妹・田所律子)、吹越満(神父)、高橋侃(中谷亨)、落井実結子(清佳(幼少時))、高畑淳子(ルミ子の義母)、大地真央(ルミ子の実母・露木華恵)、ほか


国内 戸田恵梨香 永野芽郁


映画「母性」解説

この解説記事には映画「母性」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。


母性のネタバレあらすじ:起

大阪市で女子高生が飛び降り自殺をするという事件が起き、警察は自殺と他殺の両面で捜査していました。


高校教師の清佳(永野芽郁)は自殺した女子高生の母親の「愛能う限り大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」とのコメントを見て、自身の生い立ちを振り返りながら母性というものを考えていました。清佳の母親のルミ子(戸田恵梨香)は裕福に育ったお嬢様。ルミ子の父親は早くに亡くしていたものの、母親と二人で幸せに暮らしていました。


ルミ子は24歳の時に絵画教室に通っていた田所(三浦誠己)と結婚しました。ルミ子は実母の露木が嫌いでしたが、母親が田所を気に入ったので友人の反対などを押し切り田所との結婚に至ります。その後母親に助けてもらいながらも幸せに過ごしたルミ子、やがて清佳が生まれてきます。



母性のネタバレあらすじ:承

清佳が幼稚園に上がった頃、台風が近づいていたある日。田所は夜勤で出かけていて、ルミ子の母親が来ていました。清佳がルミ子の母親と寝たがったので一緒に寝させていたのですが、落雷が起き、その影響で木が倒れルミ子の母親と清佳がタンスの下敷きになってしまいます。


カーテンに火がつき非常に危険な状態です。ルミ子は母親を助けようとしますが、母親は清佳を助けるよう言います。嫌がるルミ子の手を振り払い、逃げるよう告げる母親の言うことを聞き、泣きながらルミ子は清佳を抱え逃げ出します。


結局、ルミ子の母親は亡くなってしまいます。その後、家が火事でなくなってしまったので、田所の実家に居候することになります。


母性のネタバレあらすじ:転

何かと口うるさい義母(高畑淳子)に黙って従うルミ子。夫である田所は何も言わず黙っています。高校生になった清佳にはなぜルミ子が黙って従っているのか分かりません。ある日、義母に口答えした清佳を、ルミ子は部屋に戻り軽く叱ります。それでも清佳はルミ子を手伝い喜ばせようとしますが、ルミ子に冷たくあしらわれます。


ルミ子は何があろうとも義母に従い、田所の妹である律子(山下リオ)でさえも同様に接します。やがて義母は認知症を患います。清佳はホームに入れたらどうかとルミ子に提案しますが、とんでもないことだと反対しました。そこで清佳とルミ子の関係が悪化の一途を辿ることになります。


清佳はある日、父親が仁美という女と不倫していたことを知り、問い詰めると祖母が清佳を守るため自殺したことを初めて知ることになります。家に戻った清佳はルミ子に真実なのか聞くと、ルミ子はそれを認めました。酷く動揺し、ごめんなさいと謝る清佳をルミ子は宥めようとしますが、清佳は受け入れられずルミ子を突き飛ばしました。ルミ子の脳裏に、母が亡くなった日の記憶が蘇ります。



母性の結末

「子供なんてまた産める」と清佳ではなく母を助けようとしたルミ子に、母は「自分の命が未来に繋がるのが嬉しい。あなたを産んで幸せだった。ありがとう。これからは愛能う限り大切に清佳を育ててあげて」と告げ、ハサミを首に刺して自殺したのでした。それを見たルミ子は泣きながら清佳を助けたのです。


全てを清佳に語ったルミ子は「愛してる」と清佳にハグするかと思いきや、首を締め始めたのです。清佳はルミ子になら殺されてもいいかと思っていたのですが、思い直し、ルミ子を振り払い逃げてきた台所で膝を抱えます。


その夜、清佳はルミ子ではなく自分で命を絶とうと首を吊るのでした。しかし失敗に終わり、義母に見つかると救急車を呼ばれてしまいます。薄れゆく意識の中、ルミ子が清佳の名前を叫ぶの清佳は覚えていました。


やがて意識を取り戻した清佳、ルミ子は清佳の手をずっと握っていたようです。清佳が意識を失っていた間、ルミ子は懺悔室で自らの非を認め懺悔しながら清佳の無事を祈っていました。


大人になった清佳が同僚の先生たちと飲みながら話をしています。ニュースでみた亡くなった女子高生に、女には2種類あると伝えたかったと話す清佳。どんな種類なのか問う同僚に「母と娘」と清佳は答えます。


いつまでも誰かの娘でいたい人もいるのだと話す清佳、どうやら妊娠しているようです。電話でルミ子に伝えた清佳、ルミ子から「命を繋いでくれてありがとう」と伝えられていました。帰宅の途につく清佳は「私は(母か娘か)どっちかな?」とお腹に手を当て考えるのでした。