そして、バトンは渡されたの紹介:2021年日本映画。2019年の本屋大賞、TBS『王様のブランチ』ブランチBOOK大賞2018、紀伊國屋書店・キノベス!2019大賞などを受賞した、瀬尾まいこ原作の同名小説を映画化した作品です。3人の父親、2人の母親と血の繋がりのない親の間を「リレー」されてきた主人公の若い女性の成長を描きます。

監督:前田哲 出演者:永野芽郁(森宮優子)、田中圭(森宮壮介)、岡田健史(早瀬賢人)、稲垣来泉(みぃたん)、朝比奈彩(美人先生)、安藤裕子(水戸香織)、戸田菜穂(早瀬の母)、木野花(家政婦の吉見さん)、萩原みのり(優子の友人)、中井千聖(優子の友人)、石原さとみ(田中梨花)、大森南朋(水戸秀平)、市村正親(泉ヶ原茂雄)ほか


国内 岡田健史 永野芽郁 田中圭 石原さとみ

そして、バトンは渡されたの予告編 動画




映画「そして、バトンは渡された」解説

この解説記事には映画「そして、バトンは渡された」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。


そして、バトンは渡されたのネタバレあらすじ:起

高校3年の女子高生、森宮優子(永野芽郁)は、今まで苗字が4度変わってきたという経歴の持ち主です。優子はこれまで3人の父親、2人の母親の元で育ってきました。


卒業を間近に控える優子は、担任との個人面談で何か悩みはないかと尋ねられ、自分には悩みがないことに悩みました。現在、優子は3人目の父・森宮壮介(田中圭)と一緒に暮らしていました。壮介との関係は良好ですが、優子は現在独り身の壮介には早く良縁があることを願っていました。


優子は卒業式の合唱においてピアノの伴奏を担当することになりました。練習の際、優子は演奏に行き詰っていた時、早瀬賢人(岡田健史)という男子生徒に助けてもらいました。早瀬の弾くピアノに優子は心を惹かれていき、互いにピアノの腕を褒め称え合いました。


ある日、優子は早瀬が落とした譜面を届けようと音楽室へ向かいました。早瀬はイタリアの作曲家ロッシーニの写真を見るなり、ロッシーニは音楽家であるとともに一流のシェフであったことを教えてくれました。


そんなある日、壮介の勤め先に田中梨花(石原さとみ)という女性が訪ねてきました。梨花は優子の2人目の母だったのです。梨花は壮介や優子と3人で食事をしようと約束しました。梨花は痩せこけており、頭には帽子とスカーフを被っていました。しかし、梨花は待ち合わせ場所のレストランに姿を現しませんでした。



そして、バトンは渡されたのネタバレあらすじ:承

卒業式の日、優子は壮介の見守るなか見事にピアノ演奏を披露しました。そんな結子を車椅子に乗ったある人物が密かに見守っており、演奏が終わるなりその場を去っていきました―――。


―――優子(稲垣来泉)が生まれて初めて名乗った苗字は「水戸」でした。優子の実の父は1人目の父である水戸秀平(大森南朋)。実の母にして1人目の母である香織(安藤裕子)は優子がまだ幼かったことに他界しており、優子には香織の記憶はありませんでした。


それでも優子は祖父母と一緒に暮らしていたため、特に寂しいということはありませんでした。しかし、運動会や授業参観などの学校行事がある度に、優子は母親がいないという違和感を感じ取っていました。


やがて秀平は(現代パートで壮介が出会った)梨花と出会い、再婚しました。若くて美しい梨花はまさに“魔性の女”というべき存在でしたが、優子のことを“みぃたん”と呼んで可愛がり、限りない愛情を注いでくれました。


しかし数年後、秀平は夢を叶えるためにブラジルで事業を起こすことを決意しました。梨花はブラジル行きに反対し、優子も日本に残ることを希望したため、秀平と梨花は離婚、優子は梨花についていくことにしました。


梨花に引き取られた優子は苗字を「田中」と変えました。秀平は離婚後も養育費は渡していましたが、優子は秀平に手紙を書くも返事はなく、寂しい日々を過ごしていました。奔放な性格の梨花は浪費癖があり、その度に優子は節約しなければだめだと梨花を諭していました。


そして、バトンは渡されたのネタバレあらすじ:転

優子が小学6年生の時、友人の影響でピアノの練習がしたくなりました。そこで梨花はピアノの練習にうってつけな大きな家を持つ裕福な初老の男、泉ヶ原茂雄(市村正親)と出会い、瞬く間に再婚しました。優子は苗字を「泉ヶ原」と変えました。


優子は茂雄の持つピアノで練習に励み、茂雄も優子のことを可愛がってくれました。郁子はようやく安定した暮らしを手に入れたかのように見えましたが、梨花は再婚前と急に裕福になった再婚後との暮らしの劇的な差に耐え切れず、事あるごとに優子に「ここを出よう」と言い出していました。この頃から梨花は少しずつ体調に異変を感じるようになっていました。


優子が中学3年生の頃、梨花は突然、茂雄に付き合っている男がいることを打ち明けました。この男こそが梨花の中学生時代の同級生だった壮介でした。茂雄はただ「わかった」としか言えず、梨花は茂雄と離婚して優子を引き取りました。


こうして梨花は壮介と結婚し、優子は現在の苗字である「森宮」となりました。ところが梨花は再々婚からわずか2ヶ月後、「探さないでください」との書き置きを残して忽然と姿を消してしまいました。優子は梨花がまた好きな男でもできたのだろうと思い、そのまま壮介と2人での暮らしを続けました。


そんなある日、壮介は梨花から離婚したいとの連絡を受けました。離婚届を出した壮介は優子の父親になることを決意、彼女を正式に引き取ったのです。


高校に入学した優子はクラスの同級生(萩原みのり、中井千聖)らから「作り笑顔が気持ち悪い」といじめを受けるようになりました。しかし、優子は自分の複雑な生い立ちと家庭環境のことを明かすとクラスの全員が驚き、その日から優子はいじめられなくなっていきました―――。


高校卒業後、優子は調理師免許を取るため短大に入り、早瀬はピアニストを目指して音大へと別々の道に進みました。優子は密かに早瀬に想いを寄せていましたが、早瀬には既に恋人がおり諦めざるを得ませんでした。


優子は短大入学と共に一人暮らしを初めていましたが、時折壮介の元にも訪れていました。壮介は失恋した優子を心配してあれこれ聞こうとしましたが、血の繋がりがないゆえにどうしても上手く会話ができませんでした。


一方の優子は、自分は今の「森宮優子」であることを守りたいと考えていましたが、もし次に苗字が変わるとしたら自分の力で変えなければならないと思い始めていました。



そして、バトンは渡されたの結末

短大を卒業した優子は早瀬と再会を果たしました。早瀬は恋人と別れ、音楽家になれずにふらふらとしていた状態でしたが、二人が気持ちを通わせ合うのに時間はかかりませんでした。優子と早瀬はそのまま交際をスタートさせ、やがて結婚を考えるようになっていきました。


壮介は優子と早瀬の結婚に反対したため、優子はかつての父親たちにも相談することにしました。茂雄は素直に優子と早瀬を祝福し、壮介も優子の結婚を認めざるを得ませんでした。結婚式の前夜、壮介は優子にある手紙を渡しました。それはかつて、優子を壮介に託して家を出て行った梨花からの手紙でした。


梨花は実は重い病を患っており、これ以上優子と一緒にいることができなくなったため、寂しくないように茂雄に優子のことをお願いしたこと、優子に家族を残すために壮介の元に向かったこと、そして姿を消したのは優子に自分の病気のことを知られたくなかったためだということを手紙に綴っていました。


さらに梨花はブラジルの秀平から優子宛に送られてきた手紙を密かに隠しており、そのことに対する謝罪も添えられていました。これらは奔放ながらも不器用な人生を歩んできた梨花なりの優子への愛情と贖罪でした。そして優子の高校卒業の日、密かに優子を見守っていた車椅子の人物とは梨花だったのです。


翌日は優子と早瀬の結婚式の日。式には秀平、茂雄、壮介と3人の父親が出席し、娘の門出を見守っていました。優子が秀平、茂雄、壮介と託されてきた“リレーのバトン”はこうして早瀬へと渡されたのです。


そして梨花は既にこの世を去っていました。優子はかつて梨花が言っていた「幸せは笑うと訪れる」との言葉を思い出し、涙を流しながらにっこりと笑ってみせました。